|
『卵をめぐる祖父の戦争』
デイヴィッド・ベニオフ/著 早川書房 2010/08
物語は、作者が祖父に戦時中の体験を取材しに行くところから始まります。
ロシア生まれの祖父は、勝気で魅力的な祖母とふたりで、現在はアメリカに住んでおり、もの静かで、優しく、料理が上手。彼は、18歳になる前、ドイツ人をふたり殺したという。テープレコーダーを前に、その体験が語られていく――。
900日にわたるナチスドイツの包囲の結果、67万人という犠牲者を出したレニングラード包囲戦。その極限状態の中で、祖父は、軍の大佐からとんでもない命令を与えられる。「娘のウェディングケーキのために卵を手に入れて来い」。
食糧不足で本の糊まで食べる状況下、不可能と思える任務だが、しかし、手に入れないと命はない。祖父は、個性的な相棒とふたりで、卵を求め大冒険を繰り広げることになる。
戦争の悲惨さや愚かさを描くと同時に、人間の勇気や優しさ、友情や恋をユーモアたっぷりに描く名作です。
このハヤカワポケットミステリシリーズは、海外の娯楽小説を数多く紹介しています。文庫コーナーの隅という、なかなか目につかない場所にありますが、リーバス警部シリーズや87分署シリーズなどの警察小説や、推理小説などもたくさん揃っています。思わぬ名作に出会えるかもしれません。秋の夜長に、是非手に取ってみてください。
|